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こどもとメディア– kodomo-media –

どのような作品をこどもに見せるのがよいでしょうか?

現実への繋がりや好奇心を促すような作品がよいでしょう。

作品を通して聞たり見たりすることが、世の中の”実態に繋がる”内容がよいと思います。アニメーションや実写を見て、「この動物は実際に見たらどんなふうに動くんだろう」「鳴き声をじかに聞いてみたい」などと、こどもの好奇心を喚起させるようなコンテンツがよいでしょう。映像を観た後に、「じゃあ、外へ見に行こうか? 実際に聞いてみようか?」と実体験につながることは大切。現実への繋がりや好奇心を促すような映像をバランスよく見ることが大事だと思います。

見せるとよくない作品はありますか?

極度に強い光、過度に早い映像、複雑すぎる作品は避けたほうがよいでしょう。

こどもがついていけないような複雑な内容は情報処理の負担が脳にかかりすぎます。とはいえ、単純すぎるものでもなく、中程度の複雑さがよいと思います。無色よりは色のあるもの、静止画よりは動画といった、ある程度刺激のある作品がよいとされています。

また、極度に強い光や過度に速い映像も目や脳に悪影響があるかもしれません。一時的にこどもが強烈な刺激に魅せられて夢中になってしまうこともありますが、特に就学前のこどもには、理解できるストーリーを強烈すぎない光やスピードで見せる映像がよいと思います。

映像には、こどもの好奇心や興味を引き起こす”覚醒系”作品と、こどもの気持ちをほっこりと癒やす”鎮静系”作品があります。そういった作品をそのときどきの状況や目的に応じて臨機応変に使い分けて見せることが大切でしょう。

さらに、気をつけていただきたいことはこども一人ひとりの個性に合わせたコンテンツを選んでほしいこと。映像や音などに対する敏感性は個人差があります。こどもによっては強い刺激を求めたり、少しの刺激でも負担に感じたり、様々。生まれつきの個性や気質があるので、どの映像がよくて悪いという一般的な基準を設けるのは難しいですが、親御さん自身がこどもに合わせて調整していくことが大切です。

年齢の高いきょうだいと同じコンテンツを見せるのが心配です。

お子さんが暴力的な行動を頻繁に模倣するようであれば、作品から引き離すことも時には必要かもしれません。

作品を見ているお子さんが不安そうな様子を見せたら、そのコンテンツは見せないほうがよいと思います。暴力的な映像に過度にさらされている場合にこどもの攻撃性が若干増すという研究結果も一部ありますが、映像とこどもの暴力性や落ち着きの因果関係は現時点で明確に証明されていません。

こどもは見るだけでもいろいろなことを学習し、自分が憧れている登場人物と同じ行動をとることで学習していきます。これは”観察学習”や”モデリング”と呼ばれるもの。もし、暴力的な行動を頻繁に模倣するようであれば、ときにはそういった映像を避けてもよいかもしれません。

こどもに一人で動画をみせてもよいですか?

1回目は親子で見て、それをお子さんが気に入ったら、それからひとりで見せても構いません。

最初は親御さんと一緒に見るのがよいでしょう。こどもの発達は”人との相互作用”が絶対的な基盤になります。絵本の読み聞かせのように、一緒に作品を見て気持ちを共有し、言葉を交わしていく。このような経験は幼少期のこどもの発達にはとても重要です。動画も映像も同じで最初の映像は親子で一緒に見て気持ちを共有し、会話をする。そしてこどもが気に入れば、ひとりで見せてもよいのではないでしょうか。作品を選ぶ基準は「この作品だったらうちのこどもにぴったりだな」と絵本を選ぶときと同じように考えればよいでしょう。

こどもが同じ動画に夢中になり、何回も繰り返して見ているのを途中で止めさせてもよいのでしょうか?

バランスのよい生活習慣を作るために、ルールを作ってもよいのでは?

同じ動画を何度も繰り返して見ているということは、お子さんはすでに内容を理解して、いつでも見るのを止めてもよい状態になっていることだと思います。食事の時間はなるべく見ないことにするなど、バランスのとれた生活習慣が送れるようにルールを決めてもよいのではないでしょうか。

ルールが守れるようになるのは個人差がありますが、3~5歳のこどもは社会には規則があるということに対して敏感になっていきます。ただ、それ以前に家庭内でも世の中の約束や決まりごとに対して、こどもが気づくことはとても重要だと思います。ルールをすんなりと受け入れ聞いてくれなくとも、早い段階からお子さんに対して「こんなルールもあるんだよ」と話しておくことで、お子さんがもう少し成長したときに社会のルールに対応していきやすくなるかもしれません。

何歳の頃からこどもにルールを作ればよいのでしょうか?

言葉をなんとなく理解し始めた頃から、ルールについて話しておくとよいでしょう。

1歳頃までに、こどもはほかの人の行動をじっくり観察するようになっています。例えば、上のきょうだい、お父さんやお母さんの行動を見ています。お子さんが”なんとなく言葉を理解”していると思うような時期から、「ルールがある」ことを話しておけばよいと思います。家族の行動を観察しながら、親に言われたことを少しずつこどものなかで消化していくので、周りの人の行動も大切です。

ルールが守れないこどもにはどう接すればよいのですか?

「今度守ろうね」と親の思いを伝えることが重要です。

「今度守ろうね」という言い方がよいと思います。「今回はできなかったけど、次はルールを守れるとよいよね」と親の思いを伝えていくことは重要でしょう。映像を見るのを止めさせるときは「いまここで止めたら、あなたはもっとよく眠れるよ」とか「いまはご飯を楽しく食べようね」という呼びかけでよいと思います。

作品の選択をこどもに任せてもよいでしょうか?

ジャンルには一定のバリエーションを保ちましょう。

こどもの選択に任せっぱなしというよりは、一定のバリエーションをこどもに経験させてみることも必要です。こどもがすごく気に入ったものがあっても、ひょっとしたらまったく違うジャンルの作品も好きになるかもしれません。お子さんの好み、興味関心や好奇心を広げて現実世界での活動を多様なものにするため、ある程度のバリエーションを親御さんが保ってあげるのがよいと思います。

アニメーションと実写でこどもへの影響に差はありますか?

アニメーションの刺激のほうが実写より弱い場合もあります。

こども向けの作品はアニメーションが多いですよね。アニメーションは実写よりも全体的に刺激が和らいでいるという意味では、お子さんにとって好ましい側面もあります。リアルな実写では刺激が強すぎるような場面も、アニメーションで表現されると少しぼかしが入ります。また、アニメーションのキャラクターは子供のことが多いので、外見や声など視覚的にも聴覚的にも柔らかな印象になっています。

アニメーションやファンタジー作品の豊かな色彩や物語はこどもの芸術性を育みますか?

豊かな色彩や物語はこどもの想像力を培います。

こどもはただ映像を見ているのではなく、自分のなかでストーリーを反すうし、自分の物語にしていったり、そのストーリーに自分を登場させてみたりなど常に想像力を働かせています。そういった想像力やファンタジーを培うために、豊かな色彩やストーリーのある作品を選ぶのはよいでしょう。

ファンタジーはこどもの心や脳の発達に寄与していると考えられています。例えば、ごっこ遊びで自分が警察官やケーキ屋さんになったつもりで、自分のなかでストーリーを作り上げていく。その内容がどんなに荒唐無稽であっても、ストーリーを展開していくこと自体が”心や脳を育む”と言われています。

ファンタジー作品で見た登場人物になりきり、想像上の友達や仲間を連れて冒険へ行く。そんなふうに想像力を駆使して夢中になって遊ぶ経験もこどもの成長にとって非常に大切です。

主人公が外国人と日本人では、日本人のこどもにどういう影響の差があるのでしょう?

バリエーションをもたせた国内外の作品を見ることは、こどもの多様性に対する考えを育みます。

影響の差に違いがあるというよりは、大人もこどもも、違う文化のなかでは人間関係や行動のあり方も違う、そして、社会には暗黙の基準があることを、外国作品を通して学びます。例えば、個人の成功や達成を注視する欧米の文化では、そういったテーマの物語が作られます。一方、日本などアジア圏の作品ではどちらかというと人との関係性を重視したテーマ—自分が成功するよりは、みんなで一緒に幸せになろう—がアジアのコンテンツには多い気がします。

そういった色々な文化の作品を見ていくうちに、「ああ、そういう考え方もあるな」とこどもが受け止めていくのはよいことではないでしょうか。そもそも、こどものほうが「違い」に対する拒絶反応が大人よりも低いと思います。違いは認識しても、違いを大切にする力はこどものほうが豊か。これからの社会を考えるときに、国内外を含め、多様な作品選びはこどもにとって好ましいでしょう。

こどもが映画を見るにはスマホとタブレットのどちらがよいでしょうか?

強い光が視力や睡眠に悪影響を及すので、どちらも長時間見続けてはいけません。

目のお医者さんによると、以下の3つが視力に悪影響を及ぼす場合があると言われています。
① 強い光を浴びる
② 小さなスクリーンで映像を見る
③ 長時間、見続ける

ブルーライトなど強い光を浴びると睡眠に関わるホルモンが分泌されづらくなります。とりわけ、寝る前のスマホやタブレット使用に警鐘を鳴らす専門家は多いです。実際に、WHO(世界保健機関)は5歳未満の幼少期ではできるだけブルーライトにふれさせないほうがよいと提案しています。

ただ、現実的に親御さんがスマホやタブレットを日常的に使用している状況で、こどもたちの興味がそこに行かないわけはありません。ですからある程度のルールを決めたほうがよいでしょう。

スマホやタブレットを見てもよい時間の長さはどれくらいですか?

こどもに悪影響を与えるスクリーンタイムは断言できませんが、こどもの活動にバリエーションをもたせましょう。

WHOのガイドラインは、1歳未満のスクリーンタイムはゼロ、1歳~4歳のスクリーンタイムは継続する1時間未満だと示しています。しかし、これは必ずしもその時間を越えるとこどもに悪影響があるという意味ではありません。スマホやタブレットで遊ぶことにより、こどもたちが体を動かして遊ぶことが少なくなり、運動面の発達に影響してしまう危惧があるという意味です。

1日中スマホやタブレットを見て過ごすのは明らかによくないですが、こどもの活動にバリレーションをもたせてあげればよいと思います。ある時間帯はスマホやタブレットを見てもよいが、外遊びや会話する時間を十分にとり、バランスのとれた活動をすれば大丈夫でしょう。

映像を見せるといけない時間帯はありますか?

就寝1時間前からは映像を見せないほうがよいでしょう。

ブルーライトの弊害は大人もこどもも同じで、睡眠と関わるメラトニンというホルモン分泌に影響します。夜に映像からの強烈な光を浴びると、脳が昼間だと勘違いをして眠れなくなるのです。こどもには連続的な10時間の睡眠が必要なので、メラトニンの分泌を抑制しないように就寝前に映像を見せないほうがよいでしょう。特に1~3歳のこどもは昼寝の時間も大切なので、昼寝も夜も就寝前の1時間ぐらい前から映像は見せないほうがよいかと思います。

動画視聴が習慣になると読書への関心が薄れますか?

文字への橋渡しとして動画を見せるのはいかがでしょうか。

文字にふれることも、こどものイマジネーションを広げるために重要です。動画は動きも音も情報が全部そこに盛り込まれているので、本と違い、こどもが想像力でストーリーを補う必要がありません。本だと、文字の背景にある世界をこどもが頭のなかで作り上げなければいけないですよね。そういった意味で、こどもが絵本や本にふれることは一定量必要だと思います。

なにか動画を見たら、それに関連する物語を絵本や本で読むなど、動画と文字を補い合うような状況を作り出すのはいかがでしょうか。多くのお子さんは、動画を見て面白いなと思ったら、そのキャラクターが登場する絵本や本を読みたがります。”文字への橋渡し”として動画を見せる工夫をすればよいと思います。

会話のほとんどない作品を繰り返し見ることは、言葉を学ぶ時期のこどもにマイナスとして働きますか?

それ自体がデメリットになることはありません。

基本的に言葉は、自分自身が色々な人から話しかけられて発達します。作品で見るシチュエーションをこどもが自分のなかで消化し、それを言葉にし、会話をすることでマイナスには働きません。ですから、周りの人がその作品について会話をお子さんとすれば大丈夫でしょう。

外国語の作品を見ることで外国語を覚えますか?

作品から覚えた単語を使い、実際に会話することが語学習得としては必須でしょう。

外国語をただずっと聞いていても習得はできません。自分自身がその外国語で話しかけられたり、一緒に話したりすることで言語は効果的に習得されていきます。作品から覚えた単語を使い、”実際に会話する”機会を作ることが重要。

語学の習得を動画だけに期待しない方がよいと思いますが、日本語以外の言葉に対するこどもの興味関心や好奇心を引き出してあげるのはよいことだと思います。そこにはやはり、親御さんとの会話が必要です。親御さんと外国語について話すことで、語学を学んでいける可能性はあります。

遠藤利彦(えんどう・としひこ)

東京大学大学院教育学研究科教授・同附属発達保育実践政策学センター(Cedep)センター長。
1962年 山形県生まれ。東京大学教育学部卒業。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(心理学)。
東京大学教育学部助手、聖心女子大学文学部専任講師、九州大学大学院人間環境学研究院助教授、京都大学大学院教育学研究科准教授、東京大学大学院教育学研究科准教授などを経て、現職。
専門領域は発達心理学・感情心理学・進化心理学など。
日本赤ちゃん学会理事・日本子ども学会理事・日本学術会議第25期会員など。
近著として
『情動発達の理論と支援』(編著)(金子書房, 2021)
『入門-アタッチメント理論:臨床・実践への架け橋』(編著)(日本評論社, 2021)など。